第11回 「EL CHANKO〜DJ Aicongaの音楽雑記」

魔性の酩酊音楽「CUMBIA」

この連載も残すところ2回となりました。今回は満を辞して、私が長年プッシュし続けている音楽「クンビア」を紹介します!

 クンビアとは、17世紀にコロンビアはカリブ海沿岸のバランキージャやカルタヘナ辺りで生まれたと言われている、アフロの要素が強いラテン音楽です。詳しくは、音楽ライターの大石始氏が分かりやすく解説しておられるので参照してください→ 特集:世界のクラブ・シーンで注目を集める中南米産音楽、クンビアとは? – CDJournal CDJ PUSH

 ラテン音楽と言っても、日本人が想像しがちな、キラキラしていて、テンション高めで、フロアで男女がくるくる回っているようなイメージとは全くかけ離れていて、日本のサルサクラブでプレイされることはまずありません(昔かけたら怒られました)。しかし、その土臭くモタっとした2拍子のループが匂わせる中毒性と、歌謡曲のような哀愁を漂わせるメロディには、サルサやレゲトンには無い独特の魔力があるのです。

 まずは、その「モタっとした感じ」をこれでもかと凝縮したBlack Sabbathのカバー「I ron man」をお聴きください。

これはサルサクラブでかけたら確実に怒られるやつですね。

 次に、私がクンビアにハマるきっかけになったアルバム「Colombia!」の中からお気に入りを一曲。軽快なスカっぽさとクンビア特有の粘りが絶妙に共存しているところが魅力です。

 このアルバムは、フエンテスというコロンビア音楽の名門レーベルの黄金期である60〜76年の音源を集めたオムニバスです。Fruko y sus tesosやMichi Salmiento、Wganda Kenyaといったコロンビア音楽シーンの巨匠たちの名演を集めた極上の一枚で、これを聞かずしてクンビアを語るべからず!と言えるほどの名盤です。

 クンビアには、厳密にはポロやガイタ、チャンペータ、バジェナートなどの分類があるほか、チーチャというクンビアから派生した兄弟音楽もあります。しかし、トラディショナルからポップスへ変化するにつれ、それらのジャンルもざっくりとクンビアと括られることが多くなりました。そして今では「コロンビアの伝統音楽」という域を超えてアルゼンチンやペルー、メキシコをはじめ中南米全域で老若男女に愛されています。

 上に挙げたバジェナートのようなオーセンティックなクンビアを現在進行形で演奏しているのが、LA在住のコロンビア系ミュージシャンによるバンド、Very be carefulです。クンビアのモッタリ感は酩酊状態に例えられることが多いのですが、彼らはその権化のような人たちで、実際ライブ中にメチャメチャ酒を呑みます。私はワンステージ終わらないうちにダックジャニエル1本が空になるのを目撃しました。

 その破天荒さを気に入ったのか、The clashの故ジョー・ストラマーが彼らを前座に起用したことでパンクやロック界隈にも名が広まり、今ではラテンの域を飛び越えて幅広いシーンで演奏しています。日本でも、各地のライブハウスをはじめ朝霧ジャムやフジロックに出演し、本気の酩酊クンビアで観客を唖然とさせていました。

 一方、進化系のクンビアも色々な場所で産声を上げています。

 メキシコの北部モンテレイには、意図的に速度を落としてクンビアをプレイする「レバハーダ」というDJスタイルが存在しています。その発祥については「DJ機材の故障から偶然生まれた」「お年寄りでも踊りやすいように工夫された」などの諸説がありますが、モンテレイにコロンビア移民が多く、クンビアのレコードが盛んに流通していたことは間違いなく関係しているでしょう。

Netflixの映画「Ya no estoy aquí」は、まさにモンテレイにおけるコロンビア移民を描いた作品で、レバハーダのパーティシーンがリアルに描かれています。

 上の記事で大石氏が「(ボリビアで)ひどい高山病にかかっていた僕の耳には、クンビアのシンプルなビートがまるで呪文のように聴こえてきて、それまでの“陽気でダンサブルなラテン・ミュージック”というイメージが一瞬のうちに“ドラッギーでヒプノティックなトリップ・ミュージック”に変わってしまった」と述べていますが、レバハーダのダウンテンポが生み出す酩酊感や凶暴性は、まさに「ドラッギー」そのものです。

 その魔力に気付き、あえてレバハーダな曲作りをしているミュージシャンが、メキシコのTurbo Sonideroや、

ペルーのDengue Dengue Dengueなどです。

 日本でも、クンビアを演奏するバンドが増えています。特に、近ごろ話題になっているのが民謡クルセイダーズですね。

 もともとラテンフリークの間では「すごいバンドが出てきた!」と噂になっていたのですが、Ry CooderやPeter Barakanが彼らをプッシュしたことから一気に知名度がアップ。ツアー先のコロンビアで録音した人気バンドFrente Cumbieroとの合作「クンビア・デルモンテ・富士」や元ちとせとの合作「豊年節」なども、素晴らしい民謡クンビアです。

 最後に、私が所属している浪速のクンビアバンド、Rojo regaloもちゃっかり紹介しておきます。年末には東京のクンビアパーティでのライブが予定されていますので、これを読んでクンビアに興味を持たれた方は、ぜひその魔力を肌で感じに来てください。無事に開催されますように…

この記事を書いた人

京都外国語大学イスパニア語学科卒。 20代前半でキューバへ渡りパーカッションの修行を積む。以来、パーカッショニストとして活動しつつ、ラテン音楽やアフリカ音楽を中心としたDJ活動をスタート。京都のBarビバラムジカにて、ラテンパーティ「Our Latin Way」を毎月第三土曜に開催中。

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